TOTEM ROCK かせきさいだぁ×木暮晋也 インタビュー

取材・文・撮影/勝又啓太
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ソングライターチームとしての歴史

――でんぱ組.inc の話が出たわけですが、おふたりはアイドルへ曲提供するソングライターコンビでもありますよね。せっかくなので、でんぱ組に至るまで、その歴史も振り返ってみましょうか。

木暮晋也
木暮
最初は、東京パフォーマンスドールの市井由理さん。当時、EAST END×YURIで大ブレイクした後の、セカンドソロアルバム『JOYHOLIC』(1996年08月21日発売)で、HICKSVILLEにプロデュース・曲提供依頼が3曲あったんだよね。その提供曲のうち、2曲(後の「雲のように」「素敵なベイビー」)は、順当にHICKSVILLEぽくというリクエストだったんだけど、もう1曲(後の「サイダービーチは柑橘系」)は松田聖子のようなアイドル歌謡という依頼で。それなら、作詞はかせきさいだぁしかいないでしょう、と。ふたりで松本隆+筒美京平みたいなコンビを目指そうなんてね。
かせきさいだぁ
かせき
アイドルへの曲提供は永遠の憧れですよね。松本(隆)先生が通った道ですから。
木暮晋也
木暮
松本隆さんと言えば、HICKSVILLEのサードアルバム『マイレージ』(1999年06月19日発売)では、3曲作詞していただいて。さらに、加藤くんにも2曲依頼して(「bamboo club~恋のシュビドゥワ!」「5月のスプリンクラー」)(笑)。師弟対決を外野から眺めるのは楽しかったな。
かせきさいだぁ
かせき
僕としては相当嬉しくて、これはもう燃えましたね。
木暮晋也
木暮
松本隆さんも燃えていたんじゃないかな。どんな歌詞がつくんだろうってワクワクしながら待っていたら、はっぴいえんど時代を思わせる「月光浴」が上がってきて。聞けば「はっぴいえんど以来、久しぶりにこの方向性で書いたよ」とのこと。これは確実にかせきさいだぁの存在に刺激されてるでしょ。「弟子には負けらんないぞ」と(笑)。
かせきさいだぁ
かせき
その頃よく松本先生と会っていたので、『マイレージ』が完成した時には一緒に聴いたんですよ。そこで褒めてもらえたし、僕も偉そうに「先生もすごく良かったですよ」って言って、お互い讃え合いました(笑)。力を出し尽くした戦いでしたからね。僕はアルバム完成するまで松本先生の曲の途中経過、絶対聴かないようにしてた(笑)。先生を意識しないようにって。

――「ガラスの仮面」で、その劇中劇「奇跡の人」を、主人公北島マヤとそのライバル姫川亜弓がダブルキャストで演じることになった際、二人とも相手の演技を見ないようにしたというエピソードを思い起こさせます。それにしても、『マイレージ』はトーテムロックファンは今すぐ買いですね!

木暮晋也
木暮
なんと残念ながら廃盤!(笑)
かせきさいだぁ
かせき
否が応でも、「松本隆+筒美京平」という黄金コンビを意識させられた契機でしたね。そして、トーテムロックを挟んで、HALCALIの「フワフワ・ブランニュー」(※)ですね。どうも「STAY TUNE(feat.キタキマユ)」を聴いていただいたようで、「歌ものヒップホップ」という依頼でした。僕としても他人への提供曲でラップは初。

※セカンドアルバム『音樂ノススメ』(2004年11月発売)収録

木暮晋也
木暮

コンテンポラリーなR&Bじゃなくて、歌謡ラップというべきものを目指したね。当時、自分の中でスクリッティ・ポリッティをはじめとした、80年代リバイバルがマイブーム。それをHALCALIにぶつけてみた。

個人的に、O.T.F(オシャレ・トラック・ファクトリー: RIP SLYMEのRYO-ZとDJ FUMIYA)が全編プロデュースしている彼女たちのファーストアルバム『ハルカリベーコン』(2003年09月03日発売)がすごい気に入っていたし、だからこそ普通にやっていてはたちうちできないとも思っていて。

――もろ80年代サウンドなのに、いきなりギューンとスライドギターが絡んでくるところが、木暮さんらしいかっこよさです。

木暮晋也
木暮
好きなんだよね、スライドギター。ついつい入れちゃう。
かせきさいだぁ
かせき
普通スライドギターって言うと、ハワイアンのスティールギターのイメージか、暑さや熱さを感じさせることが多いですよね。でも、この曲ではすごくクールで効果的な使い方になってます。 余談ですが、HALCALIのレコーディングは、たまたまトーテムロックと同じ池尻のスタジオにてでしたね。いつもAYU(浜崎あゆみ)が使っているところらしく、当時女子高生のHALCALIのふたりが、スタジオの方に「そこのプレステで、あゆが遊んでいるんだよ」って言われてキャッハウフフしてたのを覚えています。

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