CULTURE

かせきさいだぁのヒネモス映画レビュー

WARNING

この考察は、しょっぱなからネタバレが含まれています。
なので映画をまだ観てない方、観たけどもっと楽しもうと思ってる方は
読まない方がいいかもです。ということでどうぞ~

2016.08.05 かせきさいだぁ

シン・ゴジラを観た。もう凄く面白かったのだけど、謎がいくつかあった。
「なぜゴジラは何度も進化する必要があったのか」
「ゴジラとの決戦『ヤシオリ作戦』はナゼあそこまで地味なのか」
「ラストシーン、ゴジラの尻尾に生えていた人型は何か」
この謎を解くため、再度映画館に足を運び、三列目ど真ん中の席で確認した。
ネットでは「人間賛美で感動した」「政府のプロパガンダ映画だ」等色々な感想があったが、どれも違和感を感じた。庵野監督のことなので、もちょっとひねくれてるのではないか。

蘇るドタバタ対応

ゼネプロと僕

僕の勝手な想像では、庵野監督がシナリオを書く時間、話を膨らませる時間は凄く少なかったと思う。なので元の話の筋は凄くシンプルなんじゃないか。そして、全て元ネタがあるんじゃないか。そう思って二度目のシン・ゴジラを鑑賞した。

一度目観たときに、少しくどく感じた会議シーンが、凄く楽しく見れた。あぁ、これは震災のときのあの政府の対応の感じをブラックジョークとして描いてるんだなと思った。そーいやヤシオリ作戦で活躍する放水車(アームポンプ車)って、確か原発事故のとき注目浴びてたな…。

二度目の観賞後、全てが一つにつながった。シン・ゴジラは誰もが思うように311大震災を彷彿させる作りにしてあるな~と思ってはいたが、彷彿なんてものじゃない。シン・ゴジラは福島原発の事故で露呈した、政府のドタバタ・グダグダ対応を、ただブラックになぞっているだけなんだ!ヘリで放水!…やってみたら全然だめじゃん!ロボットで内部見よう!…放射線でやられて全然だめじゃん!危ないけど、もう人間が近づいて放水車(アームポンプ車)で冷やすしかない!うぉー、結局コレか…。ヤシオリ作戦を観ているとあの時のことがまざまざと蘇る。

進化について

ゴジラがサイズ的にも、破壊力的にも進化していくのは、震災と福島原発事故の状態がどんどん酷くなっていた様をあらわしているのではないか。え?こんなになっちゃったらもう対処出来ないじゃん!って感じを出す為の進化。初見ではゴジラ映画なのに進化させてくなんて、凄いアイデアをぶっ込んで来るな!と思ったが、これでナットク。

ゴジラの進化について行けず、全て後手後手にまわってアホ丸出しな政府の対応も、福島原発事故の初動対応をコケまくった当時の政権のソレを思い出す。

ゴジラ対策チームの「巨災対」とは、福一で戦った現場の作業員や自衛隊。我々が息をのんで見守ったような状況ではブラック表現もなりを潜めている。

庵野版「博士の異常な愛情」

ゼネプロと僕

そう考えると、なにか似た映画を観たことがある、そうキューブリックの米ソ冷戦をブラックジョークで描いた「博士の異常な愛情」だ。シン・ゴジラってのは庵野版「博士の異常な愛情」のようなものだ。米ソ冷戦の代わりに福島原発事故をブラックになぞらえた作品、それがシン・ゴジラ。

庵野監督、凄すぎです

一番ラストに映るアレを、三列目ど真ん中の席で、身を乗り出して確認した。尻尾に生えていたアレは、巨神兵にしか見えなかった…。

続編への伏線?震災から現在までの福島原発事故をなぞった作品の、続編なんか作れるのか?巨神兵使って続編作るの?確か庵野監督はこの仕事を頼まれたとき「一度きりの挑戦として引き受ける」と言ったそうだ。じゃあ、あの巨神兵にはどういう意味があるだろうか。庵野総監督と樋口監督は、一緒にオールド特撮短編映画『巨神兵東京に現る』を一緒に作った仲だけど…ひょっとして…

「もういい加減にしなさい!『巨神兵東京に現る』の庵野・樋口でした~!」
っていう漫才のオチみたいな、大ギャグなんじゃないか。「全部冗談ですからね~」ってネタバラしの。ま、さすがにそれはないかもしれないけれど。でもホント、次があるとしたらどうするんだろう。

当初シン・ゴジラはどうも一作目のリメイク的な内容になりそうだ、という噂を聞いたときから「え?また水爆をモチーフにゴジラ?それじゃライブ感無さ過ぎじゃない?」と不安になった。最近は911のテロもあったし、311の大震災もあった。ゴジラだからひょっとして大震災をモチーフにするのかな?とか色々推測した。しかしこれほどまでに福島原発事故をトレースしてくるとは。しかも移動する福島原発!一作目はオキシジェンデストロイヤーという兵器で、とって付けたようにゴジラを殺した。シン・ゴジラはゴジラを殺さずに凍結させている。この点では一作目よりも確実に勝っていると感じた。東京駅にいつ目覚めるかもわからずに凍ったままそそり立つゴジラ、そしてそれと共存していくという終わり方。我々が体験した恐怖をココまでエンターテインメントな内容に昇華するとは。庵野監督、凄すぎ。

シン・ゴジラはまだまだ楽しめる!

ゼネプロと僕

初代のゴジラは原水爆の実験への批判を熱く描いた傑作。11作目のゴジラ対へドラは当時の公害問題をサイケに描いた傑作。29作目のシン・ゴジラは原発事故の恐怖をブラックに描いた傑作。社会問題を描いたゴジラはどれも傑作になるといえる。

さて、シン・ゴジラについて僕なりに色々考察してみましたが(間違ってる箇所もあるとおもいますが)、とにかくこの映画、庵野監督のことなので全てにおいて元ネタがあると思われ、皆さんの今後の解析をモーレツに楽しみにしています。

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